2020.03.23
難聴によっていろいろな支障が出ることがいくつもの調査でわかっています。
<難聴に関するさまざなな調査>
①聴力と収入の深い関係
世帯主の難聴の程度と収入の関係をみたものです。これを見ると難聴に程度が進むにつれて収入が少なくなっているころがわかります。重度の難聴の人では難聴のない人に比べて6割程度の収入しかありません。けれども補聴器をつける人ではこの収入の減少がおよそ半分に軽減されるという結果でした。ただし失業中などで収入の少ない人は仕事で補聴器をつける必要がないという逆の見方もできるかもしれません。(※1)
②難聴者の交通事故発生頻度
カナダで行われた調査で4万6千人あまりの人を対象に5年間の交通事故と聴力の関係をみたものです。若いひとほど事故を起こしやすいので、年齢による調査をすると難聴者が高度になるほど事故を起こしやすい傾向にあることがわかります。耳からの情報も運転には大切なことがわかります。(※)2
③難聴があると転倒しやすい
転倒は高齢者において寝たきりになるもっとも多い原因ですが、米国で健康調査のデータを解析したところ40歳から69歳において難聴が10dB悪化するごとに転倒のリスクが1.4倍高いことがわかりました。正常な聴力の人に比べ軽度の人は約2倍、中等度難聴の50dBの難聴に人は約4倍転びやすいのです。音がぐるぐると動く映画や遊具で体がふらっとする感覚を感じたこともあるかと思いますが、音が入ることで周囲の状況や位置の情報を得ることによって体が安定します。(※3)実際にある研究では65歳以上の人で3ヶ月以上の補聴器装用者で、補聴器をつけているときのほうがつけていないときよりバランステストにおいて体が安定しているとの報告もされています。(※4)
④難聴と鬱(うつ)
米国全国栄養健康調査を行ったうち70歳以上の人に自覚的難聴と抑うつの調査を行いました。その結果、難聴があると抑うつが起こりやすいことがわかるました。聴力ごとに平均で35から50dB程度の中等度の難聴の女性でとくいに抑うつ傾向が顕著でした。(※7)
それでは、補聴器を抑うつは改善できるのでしょうか。補聴器をつけている人のほうが抑うつが少ない傾向にあります。ユーロトラックによるドイツ、フランス、イギリスの調査では、補聴器をつけている人において過去2週間以内に抑うつを感じた割合は難聴のない人とほぼ同じであるのに対して、補聴器をつけていない人では4割近く抑うつを感じることが多いことがわかりました。日本でもほぼ同様の調査結果が得られています。
⑤難聴と認知症
難聴が認知症と強い関連があることが2011年の米国ボルチモアの健康調査の分析から報告されて依頼多くのレポートによってその関連性が証明されてきました。(※8)2017年には世界的な権威のある医学雑誌のラッセンも認知症のうち予防可能な原因の一番に難聴を挙げました。(※9)
※1:The Impact of Untreated Hearing Loss on Household Income:S.Kochikin 2007
※2:Could Driving Safety b be Compromised by Noise Exposure at Work and Noise-Induced Herring loos?:Michel Picard, Serge A Giard; Traffic Injury Prevention,9,489-499,2008
※3:Hearing Loss and Falls Among Older Adults in the United States: F.R.lLin Luigi Ferrucci.;Arch Intern Med. 172:369-371,2012
※4:The Effect of Hearing Aids on Postual Stability .: Kavelin Rumalla,Adham M. Karim; Laryngscpe 125;720-723,2015
※5:Hearing Impairment Associated With Depression in US Adults, National Health and Nutrition Examination Survey 2005-2010.: Chuan-Ming Li.Xinzhui Zhang ; JAMA Otolarngology Herd Neck Surg.140 293-302.2014
※6:Hearing Loos and Incident Dementia : Frank R Lin, E.Jeffery Metter :Arch Neurol.68.214-220.2011
※7:Dementia prevention intervention and care G.Livingstone : the Lancet, July 19, 2017
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